バスの回数券

旅先での親切ほどありがたいものはありません。

例えば道に迷って近くの人に聞いてみて「向こうの交番で聞いてください。」と対応されるか「あなたが地図を持っているなら、教えてあげましょう。」では、かなりその街に対する印象は違ってきます。

それは国が違っても同じ事です。

ある友人がフランスのマルセイユを旅していた時のことです。

彼が町外れのユースホステルから市の中心部に向かうために、バス停でバスを待っていた時のことです。

一緒にバスを待っている人は彼を含めもう一人、おばあさんでした。

なにか品格を感じるとても姿勢の良い女性だったそうです。

その彼女が、彼に近づき何かを差し出します。

それはバスの回数券でした。

突然のことで彼は戸惑ってしまいましたが、「私はお金を持っているので大丈夫です。」と答えました。

「いいのよ、あなた旅してるんでしょ。これ使いなさい。」と笑顔で回数券を渡そうとします。

「では、その回数券の金額を払います。」と答えると、

「そんなことしなくてもいいわ。私はここに住んるし、あなたは旅行者でしょ。
あなたが自分の国に戻って、もし困っている旅人に出会ったらその人に親切してあげなさい。
そうすれば、その親切はいつか世界をめぐって私のところへ戻ってくるわ。
素敵でしょ。そう思わない?
もちろんその頃には、私はこの世にいないかもしれないけれど、私の孫がどこかでその親切をきっと受け取るでしょうけれどね。」

と笑って彼に話したそうです。

彼は帰国後、街中で困っている旅行者を見ると進んで声をかけ、助言するようになったそうです。

その時に受けた親切は一回だけでしたが、彼はあの時の親切を渡すために、今でも声をかけています。

必ずその親切は、あのおばあさんの住むマルセイユに戻っていくのでしょう。

あの時にお金のやり取りだけで終わっていれば、それまでのつながりだったのでしょうが、おばあさんの一言で、親切な想いは今でも世界中を繋いでいるはずです。

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